特集2 『発達障害ゆっくりていねいにつながりたい当事者研究』を読む
Review
3.なぜ、たくさんの情報に圧倒されないで生きられるのか「秩序問題」をめぐる一社会学者の妄想
野口 裕二
1
Yuuji Noguchi
1
1東京学芸大学
pp.58-59
発行日 2009年3月1日
Published Date 2009/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101407
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とにかく、面白かった。私のなかで長年の間つながらなかった問題がつながったような感覚といえばよいだろうか。もともと、自閉症やアスペルガーについてはまったくの素人なのだが、素人なりに、たくさんの情報に圧倒されて身動きがとれなくなるというイメージくらいはもっていた。その圧倒のされ方がよくわかったことで、逆に、「なぜ、多くのひとはたくさんの情報に圧倒されないで生きられるのか」という問題へとつながったのである。ひとはなぜ、ある状況で適切とされている行動がとれるのか。この問題は、社会学の重要な問いのひとつである「秩序問題」とも重なっている。ある社会状況において秩序はいかにして可能なのかという問いで「ホッブス問題」とも呼ばれる。その答えがすこしだけ見えてきた。
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