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血糖値や意識レベルは,患者の状態を伝える非常に重要なバイタルサインであるが,ある種の薬剤はこの2つの徴候に大きな影響を与える.低血糖や意識障害は,ときに死に至るような重篤な結果を招く.そこで今回は,低血糖と意識消失にかかわる薬とそのリスクマネジメントについて紹介する.
低血糖・意識障害が発生する原因
低血糖
低血糖は何らかの原因によって血糖値が50 mg/dl未満になることだが,その原因には医原性と医原性以外に分類される. 医原性では,糖尿病の治療過程のインスリンの過剰,または,経口血糖降下薬の過剰による低血糖が主であり,その多くは糖尿病治療にかかわる薬剤によるものである.インスリンを過剰に産生する腫瘍であるインスリノーマ等もあるが,稀である.
医原性以外では,グルコースの産生低下によるものと,グルコースの利用過剰によるものに分かれる1).グルコースの産生低下によるものとしては内分泌系ホルモンの欠乏,糖新生酵素の欠損,基質欠損,後天性肝疾患でグルコースの利用過剰によるものは高インスリン血症と高インスリン血症のないものに分かれる.その原因は多岐にわたっている.
意識障害
意識障害は,主に脳の障害によって起こる病変によるものがほとんである.意識障害を起こす病変は多数あり,大きく脳内病変と脳外病変に区別される.脳内病変は,脳血管障害といわれる脳出血,脳硬塞などの頭蓋内の病変,脳腫瘍・脳外傷やくも膜下出血などがある.脳外病変には肝性昏睡,糖尿病性昏睡,尿毒症などの代謝性脳症といわれるもの,高度の酸塩基障害や電解質異常,低血糖,低酸素血症,敗血症,薬物中毒などが主な原因である.
酸素や血糖の状態は脳機能を維持するうえで重要な要素である.脳の酸素消費量/脳重量=2 ml/100 g以下になると重篤な障害が出現する.脳の代謝には脳血流が十分に維持されることが必須であり,低酸素状態,低血糖,体液の成分異常(アシドーシス,アルカローシス,電解質異常など)が加わると,意識を清明に維持できず,昏睡状態,そして死に至る.
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