連載 わかるようでわからない精神科のコトバ・12
カプグラ症候群
風野 春樹
1
1精神科医師
pp.180-181
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100923
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あなたの両親や恋人は,実は何者かに送り込まれた本物そっくりなにせものかもしれない.
さらには,あなた自身さえもが,自分でも気づかないうちににせものにすりかえられているのかもしれない.
1人につき数千人の「替え玉」!
こうしたシチュエーションは,『マイノリティ・リポート』や『ブレードランナー』の原作者であるSF作家,フィリップ・K・ディックの小説によくでてくるものです.私たちのアイデンティティにまつわる根源的な不安をかきたてるテーマといえるのですが,実はこういう事態は,小説の中だけの話ではありません.現実に,こうした不安の中に生きている人が存在するのです.精神科では,その症状を「カプグラ症候群」(あるいは,「ソジーの錯覚」)という名前で呼んでいます.
この症状が最初に報告されたのは1923年.フランスのJ. カプグラという医師が記載した最初の症例は,次のようなものだったといいます.
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