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糖尿病の治療や管理の効果的方法はこの20年間に驚異的に進歩し,1994年のDCCT以後は大規模調査が盛んになり,幅広い科学的な知識に裏付けされた薬物治療やケアが患者個々に対応して選択できる時代になった.しかし,医師や看護師の指導(ここでは「やり方を教わる」という意味にとらえてください)を受けたのちの糖尿病患者の行動は血糖値が下がるように変容するものであるか,指導や教育の意図するところがそのまま患者に到達しているかどうか,このことについて,読者はどう考えていただろうか.我々の指導を理解している,あるいは理解するべきことと患者は思っている,と医療者は当然のように考えていたのではないか.
こう述べると,読者は「てこずり患者」とか,「コンプライアンスの悪い患者」という言葉を思い浮かべるかもしれない.しかし,それはほんとうに「てこずり患者」だったのか.医療者である我々が患者の心理状態や置かれている立場を考えなかったから,「てこずり患者」になったのではないだろうか.「てこずり患者」とはあくまでも医療者側からみた言葉であることを肝に銘じておかねばならない.
DAWN調査とは
糖尿病治療の効果を真に上げていくには,患者の心理・社会的要素がここに大きくかかわっていたのである.しかしながら,これを国際的に評価できる大規模な調査がなかった.特に,心理社会的管理の国際的比較を可能にするデータ,および利害関係者(政策担当者,患者とその家族,医師,看護師,これらの支援チームをさす)の相互関係がどうなっているかの調査が欠損していたのである.これに鑑みて,デンマークの「ノボ ノルディスク社」が糖尿病専門家チームを編成してこの課題に取り組んだ.これがDAWN(Diabetes Attitudes, Wishes and Needs)調査1)である.その概要を報告した第1回の「DAWN調査に関する国際糖尿病サミット」が,2002年4月にオックスフォードで開催された2).
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