特集 口腔乾燥症のWhy&How
口腔乾燥の基礎知識
臨床症状
柿木 保明
1
1国立療養所南福岡病院歯科
pp.1154-1157
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100829
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口腔乾燥症は,口腔乾燥を主症状とした口腔症状であるが,一般には,口腔乾燥だけでなく唾液分泌低下も含めて総称している.唾液分泌低下があると,自浄作用低下や粘膜の潤滑作用がなくなるために齲蝕や歯周炎の発症,増悪,粘膜の障害や舌粘膜の痛み,義歯の不安定,舌苔の増加,カンジダ症の発症,などがみられるようになる(表1).さらに口腔内だけでなく,味覚異常や嚥下障害などを引き起こし,全身状態にまで,影響を及ぼすことも多い.
唾液と水分
唾液は,血液から生成されるが,その機能が発揮されるのは,血液中に十分な水分が存在する場合である.したがって,腎疾患の場合や体液の浸透圧恒常性が維持できなくなると,尿として多くの水分を出してしまい,唾液を生成するための水分が少なくなる.このように唾液分泌は,唾液腺の分泌機能だけでなく,全身的な水分の浸透圧調整とも関連していることを理解する必要がある.とくに,高齢者では,腎臓における尿を濃縮する機能が低下するので,多くの水分が体より流出し,のどの渇きに対する感覚は低下する.その結果,高齢者では血漿浸透圧が上がり,体液量は減少する傾向にある1).
唾液分泌は,大脳皮質および大脳辺縁などの上位中枢の影響を受け,ストレスなどにも大きく影響を受ける.その分泌量は体温や,体液浸透圧,血中ブドウ糖などの影響を受けることから,血液中の水分量や血漿中ブドウ糖濃度などが口腔の渇きとも関連する.これらの物理化学的な因子の変化の検出は,視床下部で行なわれ,延髄にある唾液核に送られることで,唾液分泌が制御される2).
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