招待席
傷ついた子どものケア―ナースは何ができるのか
西澤 哲
1
1大阪大学大学院人間科学研究科
pp.613-617
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100759
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―私たちナースが健康問題を考えるとき,からだとこころは切り離せない問題だと考えています.西澤さんは日頃から子どものこころのケアにかかわっていらっしゃいますが,まず子どものこころとからだについて,どういうふうに捉えていらっしゃいますか.
西澤 おっしゃるとおり,両者は密接に関係していると思います.特に子どもの場合は,大人にくらべると精神症状が身体症状としてあらわれることが多いということは,臨床ではよく経験することです.
―21世紀になって「こころのケア」がしきりにいわれるようになりました.しかし,いま西澤さんが言われたように,こころとからだが関連しているとするならば,ずっと以前からこころのケアがいわれていてもいいように思うのですが,最近になってこころの問題がクローズアップされてきたのはなぜでしょうか.
西澤 単純な話として,衣食足りて…ということはあるんじゃないでしょうか.たとえばPTSD(Post Traumatic Stress Disorder)は先進国でしかみられない症状だといわれています.貧しい国ではSurvival(生き延びること)が中心にならざるをえない.生きることだけにエネルギーを使わなくてもよくなってきたときに,こころの問題が浮上してくるということはあるかもしれません.同じことを虐待体験をもっている子どもについていえば,虐待を受けている時期は,子どもはその虐待に適応するのに手一杯で,症状化しません.むしろ守られて安全な状況になってから症状化するようです.また,子どもの権利が広く認められ,擁護の必要性がいわれはじめたことも,こころのケアがクローズアップされてきた背景にはあると思います.
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