巻頭カラー連載
Harmony of Life⑩
井上 冬彦
1
1井上胃腸科・内科クリニック
pp.981
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100657
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- 文献概要
二〇〇三年に三冊目となる写真集『Love Letter』を出版した。その中の一枚がこの写真。当時、その文章を書くために何度も写真を眺めていた。
写真とは不思議なもので、見るたびにいつも新たな発見がある。この写真もそれまでに何百回となく眺めていたはずなのに、そのときふと「輝きは闇を内包する」という言葉が浮かんできた。朝焼けの美しさは前に闇が存在するからであり、夕暮れの神々しさは、後ろに闇が待ち受けているからである。「この闇と美しさは表裏一体なのだ」ということが私のなかで言語化された瞬間、「いのちの輝きも闇を内包しているのではないか」という思いが頭をよぎった。ここで言う闇とは、苦難や逆境、病気などを意味する。このような困難といのちの輝きも表裏一体なのだろう。安全で便利な生活を求めてきた人間は、その欲求が過度になるに従い、いのちの輝きを失っていったのだ。
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