特集 根拠あるケアで患者の苦痛を減らすために 手術の疑問を解決します
患者と家族に対する精神的ケアをめざして
山口 弥生
1
,
犬童 万里代
2
1大阪警察病院手術室
2東京大学医学部附属病院看護部手術部
pp.720-726
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100345
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術前訪問のコツ
手術を前にした患者の心理は複雑である.また,いざ手術となれば,誰でも言いようのない不安に襲われるものである.不安の内容はさまざまであり,疾患や予後に関する不安,痛みや不快に関する不安,身体イメージの変化と身体に損傷(切除・切開・除去)が加わる不安,人生計画の挫折(職業,人生の楽しみ)や麻酔によってコントロールされる不安が考えられる.しかし,これらの不安に対し,詳細で適切な説明を行なえば,すべての不安が解消するというものではない.また,何が心配で不安なのか,明確に答えられる患者は少ない.
不安の対象は漠然とした恐れであり,精神的には緊張感や焦燥感,身体的には胸内苦悶,動悸,呼吸促迫,口腔乾燥感,冷感,頻尿,瞳孔拡大など主に交感神経系の緊張ととれる症状が表われる.それ自体は病的ではない.しかし,術前の過度の不安は,患者にとってストレスとなるだけでなく,その反応として頻脈・高血圧・不整脈などが出現し,手術後まで持続したり,手術後の痛みに影響を与える因子であるともいわれている.
本稿の事例では,患者はがんの告知をされて,受け入れはできているという情報がカルテに記載されてあった.しかし,実際に術前訪問で接した患者の表情は暗く,不安が読み取れた.手術室看護師として,どのような看護実践が大切なのか,病棟・外来看護師との連携ポイントにも着目しながら考えたことについて述べる.
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