特集 女性HIV感染者を援助する
女性のためのHIV予防・ケアの課題—管理・指導からサポートへ
堀 成美
1
1HIV/AIDS看護研究会
pp.553-556
発行日 1999年7月25日
Published Date 1999/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902200
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昨年,テレビドラマ「神様もう少しだけ」が放映されたときは,HIV抗体検査目的に検査所や保健所に足を運んだ人が増加したとのことである1)。関係者はこれが一時のブームで終わってしまって,また何事もなかったかのようにこの病気のことが忘れられてしまうことをその当時から危惧してきた2)。HIV感染症は数ある疾患のひとつでしかなく,感染しても数年から十数年間症状がない。当事者にとっても周囲にとっても,意識が薄れていくことは当たり前なのかもしれない。これをこの病気に潜む「難しさ」ととらえて,専門家も対応をしないといけないのであろう。
それでは,専門家はどのようなことに取り組んでいるだろうか。厚生省の疫学研究の中に「母子感染」に関するグループがあるが,そこでの議論は「女性の感染」が前提である。同じ厚生省の研究の予算で多量に作成・配布されたHIV陽性の小児の治療に関する翻訳パンフレットは,症例・治療の選択の少ない日本においてどの程度有効だろうか。日本でどのような対応が必要かということに関し,Evidenceに基づいた研究や実践はまだなされていないのが実情である。実際に感染して妊娠・出産する女性・家族をサポートする立場にいる我々としては,こうした専門家の動向は,本来ゴールとされる「対象(女性・こども)のwell-being」にどれほど生かされるのか,疑問を感じずにはいられない。
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