連載 とらうべ
清潔志向の落とし穴
笹津 備規
1
1昭和薬科大学微生物学研究室
pp.91
発行日 1999年2月25日
Published Date 1999/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902101
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私は1985年から消毒薬耐性菌の研究をしている.しかし,このような菌の存在は一部の専門家を除いて,ほとんど知られてはいない.
1800年代中頃に,リスターが手術時の感染予防のために石炭酸を用いた.そして,この石炭酸による消毒は出産時の産褥熱の防止に役立った.昔の病院の診察室では,シュンメルブッシュの中でガラスの注射器や金属の医療器具が煮沸消毒され,病院の環境はフェノールやクレゾールで消毒されていた.エアコンや使い捨て器具の普及により,シュンメルブッシュは病院から消えてしまった.フェノールやクレゾールの匂いは髪の毛,衣類に強烈に付着し,手あれの原因にもなるので,医師や看護婦に嫌われ,さらに下水道法により事業所は1ppm以上のフェノール類を下水に流してはいけないと規定された関係から,フェノールやクレゾールも病院から消えてしまった.
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