特集 基本・周産期の薬剤
母乳と薬剤
石井 真美
1
1井下病院小児科
pp.490-494
発行日 1998年6月25日
Published Date 1998/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901951
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はじめに
WHO(世界保健機関)とUNICEF(国連児童基金)は1989年に,「母乳育児成功のための十カ条」と題する共同声明を発表した。世界的にみて母乳育児の普及が破局的,危機的な現状にあるという理解に立った上での対策である。発展途上国においては人工乳が乳児下痢症による死亡の直接的,間接的な原因であるとされ,毎日3,000ないし4,000人の乳児が適当な母乳育児がなされていないために死亡していると試算されている。
また1997年米国小児科学会は,母乳育児の重要性を再認識すると共に,「満1歳までは母乳育児の継続を」とするガイドラインを発表した。これによると,医学的に必要な場合を除き水・ブドウ糖液・調整乳などを補給すべきでない,生後6か月までは母乳のみを与えることが望ましい,とされている。そして母乳を与えるべきではない場合として,未治療の活動性結核患者やHIV感染者,不法薬物の使用者,児のガラクトース血症が挙げられている。
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