連載 ハローベイビー—神戸市立王子動物園子育てストーリー・5
子育てには心の栄養も
谷岡 正之
pp.354
発行日 1998年5月25日
Published Date 1998/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901923
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孫悟空のモデルといわれる金絲猴(キンシコウ)は美しいだけでなく,珍しい希少な猿だ.金色に輝き,背の長い毛をたなびかせながら木から木へ飛ぶ姿は実に美しく見事だ.また,アイシャドーをしたように目の周りがブルー,ツーンと空を向いた鼻,分厚い唇など変わった顔だが,どことなく愛嬌があり,高貴さを感じる.この珍しい猿をわが園で飼育できたのは5年前で,その翌年には中国以外では世界最初のベビーが誕生した.
金絲猴の出産は深夜が多く,誰も見たことがない.恐らく,うずくまるようにして産み,自分の手で拾い上げ,胸に抱くのだろう.そして,汚れている赤ん坊の体を口と手で丹念に拭き取り,自分の体温で温めながら乾かすのだ.約1週間,母親は隠すように胸に抱きかかえ,動く時も片手で抱えながら片時も離さない.そして頻繁に赤ん坊のお尻の匂いを嗅ぐ.ウンコやオシッコが気掛かりなのだろうか.時折胸の間から大きな目をした赤ん坊が顔を覗かせる.
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