特集 尿失禁ケア—女性のQOL改善のために
分娩と尿失禁
中田 真木
1
1東京警察病院産婦人科
pp.126-132
発行日 1997年2月25日
Published Date 1997/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901645
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はじめに
腹圧性尿失禁や性器脱などの骨盤底弛緩は,未産婦には珍しく経産婦には頻繁に見られるために,古くから妊娠と出産は骨盤底弛緩の主要な原因であると考えられてきた。高齢社会を迎えつつある現在,健康で自立した高齢者人口を形成するために,子産み子育てを終えた女性の健康と活動性の維持について工夫をこらさなければならないことはわかりきっている。この潮流に沿うならば,妊娠と出産を通しての骨盤底弛緩の予防というテーマは極めて重要なものに違いない。
しかしながら,妊娠や出産と骨盤底弛緩の関係についてのわれわれの知識は,決して豊富とは言えない。例えば,妊娠出産のどのような過程によって骨盤底にどのような障害を生じるのか,妊娠の過程が単独で,ある程度骨盤底損傷の原因となり得るのか,それとも妊娠の経過は骨盤底に特に悪影響を与えず,出産のみが骨盤底損傷の原因となるのかについて,総合的な検討を行なった調査は今までのところ見当たらない。また,妊娠と出産をどのように取り扱ったら骨盤底の損傷を最小にすることができるのかという実際的な問題点についても,いくつもの学派が創設した様々な考え方と取り扱い指針が乱れ飛んでおり,やや決め手を欠いていることは否定できない。
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