特別寄稿
エイズとの出会いの旅—中央アフリカ共和国に徳永瑞子さんを訪ねて
上畑 鉄之丞
1
1国立公衆衛生院附属図書館
pp.244-252
発行日 1996年3月25日
Published Date 1996/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901440
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マダム徳永と中央アフリカ
1995年5月22日からの5日間,私は中央アフリカ共和国の首都バンギー市を訪問した(図)。目的は,当地で助産婦の徳永瑞子さんらがすすめているエイズ予防のための国際ボランティア活動の視察である。徳永さんは熱心なカトリックの信者で,現地ではマダムの愛称で知られている。九州の助産婦学校を卒業後,東京の病院勤務を経てベルギーの熱帯医学校に入学,その後ザイールに8年,エチオピアで3年,地域住民や難民の母子保健活動に従事した日本人女性として珍しい経歴をもった人である。彼女のザイール経験を書いた『プサ・マカシ』は1989年にカネボウ・ヒューマン・ドキュメンタリー特別大賞に輝き,翌年山口智子さん主演でテレビドラマになったことを記憶している人も多いと思う。
はじめに中央アフリカ共和国を紹介する。1960年にフランスから独立した人口約300万人の小さな国。ザイールなど5か国と国境を接する内陸国である。面積は日本の1.6倍。鉄道はなく,首都のバンギーから東の国境までは,四輪駆動のジープでたっぷり1週間はかかる。日刊の新聞はないので,ニュースはもっぱらラジオ。テレビ局もあるようだが,テレビ受像機を持っている人がほとんどいない。電気はあるが停電がよくあるため,冷蔵庫はあってもこころもとない。現地の人の多くは電灯のない家に住みランプの灯で生活。首都バンギーの人口は30万人。
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