特別記事 「ニューヨークの助産婦活動—過去・現在・未来」研修ツアー
ニューヨーク助産婦研修ツアーに参加して
塩川 美奈子
1
1日赤医療センター
pp.164
発行日 1996年2月25日
Published Date 1996/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901422
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昨年8月,新野由子さんとドロシア・ラングさんが企画したニューヨーク助産婦研修ツアーに参加する機会を得た。「ニューヨークの助産婦活動—過去・現在・未来」と題したツアーで病院やバースセンターなどの見学から講義まで中身が大変濃かった。さまざまな体験の中で,とりわけ私の印象に残っているのは,あるアメリカ人助産婦の言葉だった。「大切なのは常に教育を受け続けること。ライセンスを取得したからといって新しい知識を学ばないのはプロフェッショナルとして片手落ちだ。取得したライセンスを高めていくには高潔さをもつことが大切だ」この「高潔さ」という言葉に誇りが感じられた。彼女たちが助産婦という職業に対してもっている自律性,独自性,専門性というものにもつながっていると思った。
私は助産婦になる前に4年間大学病院で内科病棟の看護婦として勤務していた。看護学生時代には「看護」の素晴らしさを教えられ,理想をもって臨床にでたのだが,理想と現実とのギャップの中で悶々としたこともあった。病院での勤務で思うことは,患者の清拭ひとつとってみても,看護婦は患者の自律へ向けて病状の許す限りできる範囲内で行なってもらうよう試みる。しかし,医師の判断で安静が必要とされた場合,看護婦のケアプランは無効となって全介助となる。看護婦と医師の独自性がいわれているにもかかわらず,実践の場では医師の方針で決められていき,看護婦の判断で患者中心の看護というのは難しかったように思えた。
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