今月の話題
伝えずにはいられなかった出産直後の声—黄助産院の感想ノートを出版するまで
河合 蘭
pp.834-836
発行日 1993年10月25日
Published Date 1993/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900896
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お母さんたちの声を主役に
「黄(ファン)助産院の感想ノートを本にしたい人が集まります」という葉書が私のポストに入ったのはもう3年以上前のことだ。葉書をくれたのは,以前から感想ノートの人ファンだった龍川美沙子さんという方。彼女は黄助産院の伝言板にもメッセージを貼った。こうして集まったのが,「グループSUN」総勢8名。皆,東京都杉並区の黄助産院で出産した母親である。メンバーには,お産を撮り続ける写真家の宮崎雅子さん,婦人民主新聞の記者をしていた定塚才恵子さんなどがいて,豊かな個性がひしめいていた。
感想ノートとは,黄助産院にそなえつけられたノートで,お産を終えた人のほとんどが自分のお産を振り返って記していくものである。このようなノートを置いている出産施設はほかにもきっとたくさんあると思う。それはしばしば自費出版されたり,また,その施設の助産婦や医師の著書の一部としてこれまでも活字になってきた。しかし私たちは,かなり初期の段階から,流通ルートに乗り不特定多数の人に届けることができて,かつ「ノート」つまり母親の声が主役になっている本を誕生させたいと考えた。自分たちが経験したことをもっと広く知ってもらいたかったし,産んだ側の声はそのための素晴らしい素材だと信じていたからである。
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