MEDICAL SCOPE
GVHD:移植片対宿主病
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.86
発行日 1992年1月25日
Published Date 1992/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900497
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GVHDという表題はgraft versus host diseaseという言葉の略で,日本語ではむずかしいのですが移植片対宿主病といわれている病気のことです。このGVHDは輸血後といっても多くは手術中の輸血後に発病するものですが,昔はよく本態がわかっていなかったので,術後紅皮症と診断されていたようです。
症状ははじめは全身の皮膚に紅斑が出現するのが特徴で,術後紅皮症といわれたのもそのためです。輸血後1〜2週後に発熱と紅斑が出現して,肝障害をおこし,下痢,下血といった劇症肝炎のような症状がつづき,ついには骨髄の機能がなくなり,汎血球減少症を示し,細菌感染をおこし敗血症となり死亡するという経過をたどります。終わりのほうは免疫不全症候群に似ていることがわかるでしょう。致死的な合併症というのですから,輸血の副作用だぐらいではすまされません。659例の手術患者につき1例の割で発生しているのが現状で,私たちの産科領域でも手術中に輸血することはたびたびあるので注意をしなくてはなりません。
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