地球の子どもたち・11
難民キャンプの子、ヘスース
長倉 洋海
pp.4
発行日 1992年1月25日
Published Date 1992/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900481
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鉄条網に囲まれた難民キャンプで、ヘスースという女の子に出会った。叱られて泣いていることもあるけど、シャボンを作って遊ぶ姿や、ダンボールの壁穴からおどけて顔を出す屈託のない明るさに魅かれて、写真を撮った。
一昨年、またヘスースに会った。彼女は十歳になっていた。キャンプにやってきて、九年。五年ぶりのヘスースは背も伸びて、ちょっぴり大人っぽくなった。将来の夢は「秘書になること」だ。母親に「字がまだ書けないのに」と冷やかされ、恥ずかしそうにうつむいた。最近、キャンプを訪れた友人の手紙の中に、彼女が書いた「ヘスース」というサインを見つけた。自分の名が書けるようになったのだ。私もうれしくなった。
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