MEDICAL SCOPE
無徴候性細菌精液
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.1126
発行日 1991年12月25日
Published Date 1991/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900478
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現在の周産期医学の話題の中心というか,ホットなディスカッションが続いているポイントは何といっても早産の原因論・メカニズムです。その根底に細菌感染があり,絨毛膜羊膜炎をおこしているという事実は十分すぎるほどわかっているのですが,その源はどこにあるのか,いつ,どんなふうにして羊膜や絨毛膜に細菌感染がおこるのだろうか。この原因論については明確に解説してくれるレポートはまだ登場していないのです。
しかし,どうやら性生活が関係しているらしいということは,確かなようです。性生活によって細菌感染の原因が作られるというのは,すべての症例でそうだとはいい切れないのですが,一部の症例では明らかに原因となっていると考えられています。というのは,男性の精液のなかには,かなり細菌がいることがわかってきたからです。しかも,表題にあるように,無徴候性細菌精液といわれる症例がかなり存在することがわかってきたのです。つまり,男性のなかには自分の精液のなかに細菌がいても,何の症状も示さないのです。このような細菌をもつ精液が腔内に入ると,それが子宮頸管を通って羊膜に達し,羊膜炎や絨毛膜炎をおこすことは当然考えられます。ですから,一度早産を経験した症例や切迫早産で入院している症例の夫の精液は,検査をしてみる必要があるのではないでしょうか。
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