インターホン
正論が届きにくい習慣のカベ—『日本人の子産み・子育て』を読んで
黒田 佳子
1
,
浜本 保
1
1小野市立小野市民病院
pp.922-927
発行日 1991年10月25日
Published Date 1991/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900434
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助産婦の立場から
近代化と産育習俗
周産期医療の素晴らしい発展により,近年における我が国の衛生統計が,欧米先進国のそれに匹敵するまでになったのは周知のとおりである。お産を取り巻く我が国の状況は,戦後特に1955年以降急激な変貌を遂げた。また,施設分娩へと流動していったのも同年代からである。積極的にお産を施設へ移し医師の管理下に置き,科学的・近代的な分娩様式へと方向転換がなされた。そのようなお産のありようは,長い間繰り返され継承されてきた日本の産育習俗に,どのような変化をもたらしてきたのか。お産の主体である妊産婦の利益につながるものだったのだろうか。ここでは当小野市立小野市民病院の状況を解説し,近代化のもたらした影響と,これに対する助産婦活動のあり方を考えてみたい。
先輩助産婦は,自然の摂理と神仏を頼むしかなかった時代から,習俗・生活習慣に従ってお産の援助を行ない,母と子の身を気遣い安全を願って,技術を考え工夫をしてきた。改善は幾多も重ねられ引き継がれてきた。先輩が長年かかって築き上げてきた方法で行なう助産は,人々にも認められ職業化するに至った。妊産婦や子供を慈しむ「こころ」「知恵」「技」を,学び伝え発展させ引き継いでいく方法が,長い間繰り返されてきた。
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