連載 とらうべ
専門的意義と日常的意義
豊川 裕之
1
1東邦大学医学部公衆衛生学教室
pp.687
発行日 1991年8月25日
Published Date 1991/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900382
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雲仙の普賢岳の噴火は,多くの犠牲を出して,今なお不気味な状態が続いている。先に,伊豆大島,阿蘇山等の火山が再び噴火をしたことも記憶に新しい。そして,イラクのクウェート侵攻のときもそうだったが,専門家や消息通が各種のマスコミに登場して,いろいろと解説するのを聴くときに,しばしば抱く印象がある。地震と火山に関しては,「よくもこれだけ大胆に説明したり,予知したりできるものだ」ということである。
地震予知で,いつも連想することは,ウシやウマが巧妙に──人間にはできないことだが──皮膚をピクピク,ピクピクと連続的に動かしてハエやアブを追い払う仕草である。人間にとってどんなに大地震であっても,ハエやアブにとってのウシやウマの皮膚振動ほどには激震とはいえないだろう。そして,人間が呼吸するときの腹部や胸部の動きにはリズムがあって,そこには規則性があるけれども,ウシやウマが皮膚をピクピクと振動させる動きには規則性などはない。地球表面の地震や噴火にしてもこれと同じであって,規則性を求めることは難しいはずだが,解説者や一部の学者はその懸念が汲み取れない発言をしていることがある。
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