特別寄稿
"人間の性"の教育
荒堀 憲二
1
1国立公衆衛生院母子保健学部
pp.1021-1027
発行日 1989年12月25日
Published Date 1989/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207745
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はじめに
性に関する話題は年々豊富になり,最近では性に関する講演や研修会が数多く催されている一方,犯罪や政治家の素行の問題に至るまでセックスにまつわるニュースは後を断たない。これまで"性"が,表世界の対象ではなかったことを考えると,"性"が社会の容認を得つつあることは,望ましい傾向ではある。
ところがその性の捉え方となると,必ずしも望ましいとは言えない。性の概念の中には,例えば「生殖のみが貴く快楽追求は利己的」といった発想もあれば,「処女性を尊重し,性を善悪の観点からみる」発想,その逆に,「快楽の追求が性の解放(開放)」といった発想まで,様々な発想が混在している。これはわが国では,"人間の性(Human Sexuality)"を科学的に捉えようとする思想が定着しておらず,そのような教育が行われてこなかったからである。しかし人間関係を扱うとき,性は避けて通れない問題であり,性について一定の見識を持たないと,対応を誤ることにもなる。そこで本稿では,多様な性価値観が認められる現在の,性の教育について考えてみた。
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