特集 出産の新潮流と助産婦
妊産婦のニーズに応える医療
赤枝 恒雄
1
1赤枝六本木診療所
pp.622-627
発行日 1989年8月25日
Published Date 1989/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207667
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
高田さんとの出会い
大学の医局に勤務して10年,その後開業した私は,陣痛と言えども痛みを感じさせることは,とても野蛮なことだという信念で,ほとんどの産婦に硬膜外麻酔による無痛分娩をすすめた。確かに薬剤を使うが胎児への影響も少なく,母体にとっても血圧の変動もなく,硬膜外腔にチュービングしておけば,10時間でも30時間でも無痛状態を維持できる,とても理想的な無痛分娩法である。この分娩法が一番いいと信じていたある日,友人のテレビ局のディレクターの紹介で高田さん夫妻と知り合った。お産についての知識は豊富で,自分たちの分娩はこうしたいるいう確固たるイメージをもっていた。それは水中出産だった。妊娠中期を過ぎていた高田夫人は,身長150cm程の小柄だが体格のいい女性だった。自分の考えを熱っぽく語られ,出産の介助をたのまれ,前向きにと答えてしまった。
水中出産は日本ではじめて,ということだったので,母児の安全には特に気をつかわなければならない。調べごともたくさんあった。水中での排便による感染,水中での大出血,胎児の窒息など心配なことがたくさんあった。ヤクルトの大腸菌研究所で,流水中のプールでの多少の排便では感染能力がないだろうと助言され,また温水中の血液は凝固し母体には止血効果となることを知った。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.