母乳育児Q&A
Q 直接授乳ができない時でも,母乳は与えつづけられるか
根津 八紘
1
1諏訪マタニティークリニック
pp.352
発行日 1988年4月25日
Published Date 1988/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207369
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A 母乳を出すためには,絶対に乳首を吸わせることが必要だと多くの人が考え,どんな条件下でも直母(直接母乳)を指導しがちで,お母さんたちもそれを励行しようとします。しかし,直母が本当に母乳を出す絶対条件でしょうか。
母乳分泌を促進し,維持する条件は,①乳房の血液循環促進(乳房マッサージ),②うつ乳状態にしない(直母ができなければ搾母,直母の後の適度の搾乳),③直母,の3つであると前回も述べました。乳首を吸畷する刺激が,下垂体の前葉を介してプロラクチン(PRL)を分泌させ,そのPRLが乳汁産生に与かることはご存じのことでしょう。そこで次に,直母がでぎない場合を下表にまとめてみました。直母が母乳を出す絶対条件だとすれば,表のように直母が不可能な場合は,母乳育児は不可能になってしまいます。たとえば,児が未熟児でインキュベータに収容された場合について考えてみましょう。哺乳のときだけ児をインキュベータから出して直母を行なうということは,でぎないことはありませんが,まず不可能でしょう。そこで児がインキュベータに入っている時は,搾乳して与えるわけです。しかし,そのようにして児がインキュベータから出てくるまで対応しても,母乳率はほとんど変わりありません。
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