連載 母乳育児Q&A
Q もらい乳は安全でしょぅか
根津 八紘
1
1諏訪マタニティークリニック
pp.720
発行日 1987年8月25日
Published Date 1987/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207206
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A 分娩により胎盤が娩出すると,プロラクチン(PRL)の働きを抑えていた胎盤由来のエストロゲンや,HPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)などが無くなるため,PRLはにわかに活性化され,乳汁産生が開始されます。しかし,すぐに児が必要とする母乳を十分分泌するわけではありません。どうしても最初のうちは児の必要量を満たすことができませんから,その分を5%G1や,ミルク,あるいは他の人の母乳で補充しなければならないときがあります。このさい,異種蛋白アレルギー発生予防と免疫学的な意味から,最初に口に入れるものはミルクではなく,初乳を与えたいわけです。そうなると5%G1か,もらい搾母と呼んでいる他の人の特に初乳の頃の母乳を与えたいということになります。このさい,母乳が出ないからと言って,何日間も5%G1で補充していることもできませんから,何とかしてもらい乳をということになります。
しかし,母乳を介して感染が考えられる疾患,特に最近問題となっているATL(ヒト成人T細胞白血病)などの罹患にたいする注意が必要です。このATLはウィルス感染で,最近のデータでは経胎盤感染や,経腟感染はほとんど見られず,母乳を介してのみ,それも長期間母乳を与え続けた例に多く感染が見られるとのことで,ATLの母児感染を予防するためにはATLキャリアの母親の母乳を児に与えることはできなくなります。
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