特集 母乳育児を援助する
産褥乳房トラブルの予防と治療—自己管理を主体として
根津 八紘
1
1諏訪マタニティークリニック
pp.572-577
発行日 1984年7月25日
Published Date 1984/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206481
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産褥乳房管理を更に再考する
産褥乳房は本来放っておいても母乳が出るようになっているべきものである。人間以外の哺乳類においては乳房の特別の手当てなしに,母乳を出して子供を哺育している。なぜ人間だけが問題にされなければならないかである。原因はまず4つ足歩行から2本足で立って歩くようになったためである。4つ足動物の乳房は胸郭の下に円錐形に下垂していて,その先に乳頭があるという形であり,常に乳房の個々の部分には均一化した力(重力・張力)が加わっており,また,常にブラブラした状態にあるため,乳房は自然にマッサージされている状態にあるといえる。その結果,乳房の発達も発育も順調であると考えられる。そして,常に乳頭・乳輪部には外的な刺激が加わっていることから,吸啜のさいの抵抗に対しても,問題を起こしにくいと考えられる。
しかし,人間は立位の状態になったことから,乳房は円錐形を保てず,乳房の各部分に加わる力は,ある部分には過度の張力となりある部分には圧迫が加わることになった。そのため,乳房の発達・発育はバランスを欠き,扁平乳頭・陥没乳頭を形成したり,うつ乳,乳腺炎を起こしやすくするものと考えられる。
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