連載小説 田中志ん物語・終りなき旅・12
第3章 産声讃歌
島 一春
pp.494-500
発行日 1983年6月25日
Published Date 1983/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206255
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異常出産
妹のゆきが元八と結婚して,志んの助手をつとめることになった。ゆきは産婆の免許を取得した後,日赤病院で2年間実習し,若いが産婆としては一人前であった。
産はすべて自宅分娩だったから,陣痛がはじまった,と報せをうけて産婆は産婦の家に駆けつけていかねばならない。それも一度も診察したことのない産婦の家から,いつ不意に使いがくるかわからないのだ。産婆はうかつに外を出あるくことはできなかった。
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