特集 生命科学へのアプローチ
科学技術の進歩と人間--助産婦として考える
生命誕生への介入
島 典子
1
1新潟大学病院産科婦人科病棟
pp.30-33
発行日 1982年1月25日
Published Date 1982/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205953
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はじめに
最近の科学技術進歩の中で特に脚光をあびているのは,「宇宙」と「生命現象」のようである。そして,マスコミの報道も手つだって,科学者はもちろんのこと,一般の人々にも強い関心と課題を提供しているようである。私も職業上,特に「生命現象」に関しては,病陳内で悪性腫瘍と闘っている患者の苦悩,産科病棟で分娩した褥婦の感激,母乳で育てている母親の満足感などと関連づけて考え注目してきた。
最近の地方新聞紙上で報道されている記事の中で目につくいくつかをひろってみても「哺乳類で初の無性生殖成功──"生命倫理に新たなる問題"──"そっくり人間"恐怖も」1)「試験管ベビー,成功率伸びる」2)「遺伝子組み替え成長ホルモン,子供に投与実験」3)など,私の興味をひく内容が多く目につく。「複製人間の誕生」4)「組み替えDNA秘話」5)「複製人間の恐怖」6)などの本も同様である。このように生命現象に関する研究と技術の進歩には,はなばなしいものがあるが,その"進歩"がかつての核兵器,自然破壊,公害などと同じ道を歩みはしないかと危惧の念をいだくものは,あながち私1人ではないと思われる。
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