Medical Scope
胎児の奇形とその反復性
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.844
発行日 1980年12月25日
Published Date 1980/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205796
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以前に出産したベビーが先天異常や奇形であったから,今回の妊娠ではそのようなことがないかどうか検査してほしい……こんな妊婦からの相談が毎日何人となく私達に向けられてきます。医学的に言うなら,ある奇形児や先天異常児が出生したら,次回の妊娠時には,それがどの位の確率で出現してくるか,その反復性が問題になるわけです。これがある種の遺伝性疾患であったり,父や母のいずれか一方が染色体異常の保因者ということであれば,非常に簡単にその解答がひき出されるし,次回妊娠時には羊水分析などの手段を用いて,妊娠中期までにその異常の診断も可能なことはもう諸君も十分に理解していることでしょう。しかし,現実には,このような理論で解決できない症例がたくさんころがっています。
最も反復性のある胎児の奇形,つまり,前回の子供がそうであると,次回もその可能性が強く残るといわれている奇形にはどんな種類があるか御存知ですか。その代表的なものに無脳症があります。無脳症がどのようにして発生する奇形かは発生学的にはわかっていても,その原因に関しては決定的なことは全くわかっていないのが現実です。しかし,世のなかには,前回の胎児も,今回妊娠した胎児も無脳症だったという不幸な女性が多ぜいおります。記録では3回つづけて無脳症を出生したという症例もあります。
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