インターホン
保育の中より眺める母性看護
小野 清美
1
1武蔵野市立南保育園
pp.571
発行日 1980年8月25日
Published Date 1980/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205753
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助産婦として多くの分娩介助にたずさわる時,頭の中に残る分娩がいくつかある。特に異常分娩,数多くの問題を持った分娩については,時折そのお産を振り返り思い出すことも多くある。だが,産科勤務者としてその母子の姿を確実に知ることができるのは,1か月後の検診までかもしれない。その後は,小児科と共に1年ぐらいの成長過程を追うことは可能であるが,5〜6年先の児を見ることは容易なことではない。私は保育園内の保健室勤務にあたり,0歳児から5歳児までを預かっているために,児の5年間の経過を見ることができた。重症黄疸で交換輪血をし,両親を悩ませた児が5歳の年長児になり,正常児と変らぬ発育・発達を示し,現在は走り回っている。母親が夢物語でも話すかのように,児の成長を私に語ってくれた時,この児を助けるために全力をあげた医療スタッフ達が,今のこの児の笑顔を見ることができたら,と考えていた。
仮死児の出産,1,600gの早産児,4,600gの巨大児,前置胎盤,妊娠中毒症,妊娠貧血等,種々の異常,あるいは問題をもったお産で生まれてきた児が園児の中にいる。彼らを見て,その分娩を想像できることもある。だが,それぞれが小さいながらも正常に育ち,順調な発達をしているし,それなりに平衡を保っている。お産のその一時期は異常であり,医療の手で助けられたかもしれない児も母も,今は元気でいる。
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