母と子を看とるなかで
癌だったひと
横尾 京子
1
1淀川キリスト教病院
pp.127
発行日 1978年2月25日
Published Date 1978/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205343
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7年という歳月は経ってしまえば短かく,過去も現在も時の流れの連続として格別の重みを感じないで過ごしてしまうことが多い。でも何かの拍子で過去と現在がある隔たりをもって逆転してしまうことがある。その何かの拍子が,ある時は古いチャートであったりする。
いつものように午前10時から褥婦回診が始まった。彼女のベッドサイドでも,頭の片隅に〈癌で手術をした人〉という認識はあったが,他の褥婦と何ら変わりなく診察をし言葉を交えた。そしてその時はまだ,以前にも彼女のベッドサイドに臨んだことがあったのに私は気付かないでいた。
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