研究・調査・報告
死産および新生児死亡した褥婦の心理とその方向づけ—褥婦・医師・看護者のアンケートより
阿部 幸子
1
,
山本 幸子
1
1東北大学医学部附属病院周産母子部
pp.526-529
発行日 1975年10月25日
Published Date 1975/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204930
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1.はじめに
私たちは,いままで周産母子部において,数多くの分娩を取り扱ってきたが,このうち妊娠・分娩中に,胎児死亡したり,新生児死亡した褥婦にたびたび遭遇してきた。分娩は1つの生理的現象であるが,多かれ少なかれ,肉体的疲労の他に精神的な負担を伴っており,産褥は感情の不安定な時期といわれている。妊娠あるいは分娩が終了するまで張りつめていた精神的な不安と緊張からの一時的解放,さらに分娩直後の産褥が,blue periodといわれているように,この時期は正常な産褥でも「うつ的」であり,自己抑制的な反応の生ずる時期である。正常で健康な母親では,その抑制的反応はまもなく消失し,すばやく新たに生じた新生児へと興味がむけられていく。
このように感情的に不安定な状態にある褥婦に対して,死産や新生児死亡などのショッキングな事項を告げることが,重要なことであるにもかかわらず,それを告げる時期や告げ方についていままで一定の基準がなく,主治医の個々の判断でバラバラに行なわれてきた。そこで私たちは,褥婦の状態や要求,医師・看護者の考え方を知り,医師・看護者の統一した方針で,褥婦のニードに添った看護をしたいと思い,調査を行なった。
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