連載 Medical Scope
胎児の免疫グロブリン
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.361
発行日 1974年7月25日
Published Date 1974/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204720
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胎児,新生児期の免疫機能は,細菌やウイルスから身を守る生体防御反応として非常に大切であり,また特殊なケースでは,Rh式血液型不適合妊娠などのような母児免疫疾患に発展するのは諸君もすでによくご承知のことと思います。このような新生児,胎児期の免疫機能のほとんどは,体液性免疫といって,胎児の体液によって免疫機能が成立しています。この事実は,自分で免疫抗体を生産する能力は非常に弱いので,母体から免疫抗体をもらって,そして免疫を成立させているという,受動的免疫が大部分であることを示しています。
このような母体からすでにでき上がった免疫抗体をもらうという現象は,胎盤を通して,母体の血液中の免疫抗体が胎児に移行するということで,血液すなわち体液によって免疫が成立するので体液性免疫という名があるのです。母体から胎児に移行する抗体は,ほとんどすべての抗体ですが,なかには移行しないものもあります。つまり,抗体が移行するかしないか,胎盤を通るか通らないかは,その抗体,ひとつひとつの特性によるもので,単に分子量が大きいから通らない,分子量が小さいから通るといった,以前からいわれていた理論ではないことが最近になってわかってきました。
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