連載 合併症と妊・産・褥婦
糖尿病と妊娠
香川 繁
1
1大蔵省印刷局東京病院産婦人科
pp.34-37
発行日 1973年8月1日
Published Date 1973/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204564
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1.はじめに
糖尿病と妊娠との関連は,単に妊婦がカゼをひいたというようなこととは違った,もっと本質的な関わり合いがある,ということにまず注意する必要がある。それは妊娠現象が生体の糖代謝に根本的な影響をおよぼすことで,つまりは妊娠には糖尿病をひき起こすような作用があるということを意味する。
そこでまず糖尿病とはどんな病気かを理解しておくことが大切であるが,糖尿病とは文字通り尿にブドウ糖が証明される疾患で,これは血中のブドウ糖が病的に高くなり,そのため腎臓からもれて出てしまうからである。血中のブドウ糖すなわち血糖が異常に高くなるのは,膵臓のランゲルハンス島といわれる特別な細胞より分泌される,インシュリンの作用不足のためと考えられている。(以前はインシュリンの量がたりないためと考えられていたが,近年血中インシュリンの量を測定することが可能となり,その結果糖尿病患者でもインシュリン量は不足していないことがわかり,インシュリン作用が不足していると考えられるようになった)
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