連載 ドキュメンタリー・日本の助産婦・4
「日本一」を自認する"おじいちゃん助産夫"—神奈川県川崎市・植松正子さん
落合 英秋
pp.50-53
発行日 1972年10月1日
Published Date 1972/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204421
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自信がなければ助産はできぬ
公害都市・川崎市にしては,わりと閑静な住宅街で,通称「おじいちゃん」と呼ばれる"助産夫"さんが開業している。おじいちゃんの名は植松正子さん,レッキとした女性であるが……,なぜか,みずからも「じいちゃん」と称する。当年とって66歳,この道40年のベテラン助産婦だ。その植松じいさんが,まず開口一番,愛想よくこういった--。
「終戦後,北朝鮮から38度線を苦労して越えて帰ってくる時,危いから頭を丸坊主にして以来ずーっと,ご覧のとおりの頭髪で,ただでさえ気が強く,いいたいことはなんでもズケズケいう男まさりの性格なので,神奈川県の人がみんな"おじいちゃん"とからかうんですよ。まあ,ロクな人間ではござらん。午前中は助産婦の仕事をしてから,毎日,昼から外へ出かける。朝のうちに稼いだ金をみんなそっくり,昼から外ではたいてくるんだから,ぜんぜん残らないねエ」
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