グラフより
海を住民のものに—土佐・宿毛
川上 重治
pp.38
発行日 1972年3月1日
Published Date 1972/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204330
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日本列島をとりまく海は公害の渦のなかにあるといって過言ではない。土佐の宿毛(人口3万)は,土讃線中村駅を終点にしてバスにて豊後水道に抜ける足摺国定公園に位置する。主として漁業,農業,林業を生業として工業はない。そのため海は青く,珊瑚礁につつまれ明度がたかい。河川は清く澄み清流となり,いま,日本一美しい都市は水をたたえた宿毛であるといってよいが,最近ここに石油コンビナート建設の計画がすすみ,市民はその反対運動にたちあがっている。
市民運動は,わが国では「育たない」とか「根をはらない」とかいわれてきたが,公害に対する市民の関心はたかまっている。"国民の健康の守り手である"という保健婦や助産婦,看護婦のなかから,公害に対する,連帯や告発があまり出ないということは,まことに残念なことではあるが,公害を自分自身のこととして受止める,住民としての認識の問題だと思う。ディスカバージャパンの幻影の虜になりさがってしまいたくないものである。
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