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一銭五厘の旗—著者 花森 安治
pp.62
発行日 1971年11月1日
Published Date 1971/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204273
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読売文学賞を受賞した本書は,雑誌『暮しの手帳』に掲載されたもののなかから,29篇を選んでまとめられたものである。
本書の題名の元となった「見よぼくら一銭五厘の旗」を含め,いくつかの詩のほかはエッセイであるが,エッセイのなかにも一貫して凛とした詩心が清流のように流れている。巻頭の「塩鮭の歌」は,鮭の一生が"かなしくも美しく"描出されているが,鮭が卵を生み落すために自分の生まれた川に戻ってくる,その壮絶な旅路を愛情濃く歌いあげる著者の姿勢が,ほとんど本書の軌跡なのである。大衆という鮭の群れが,あらゆる困難にめげず,おのがじしの生を生きくらしをくらしていけるよう,著者は先頭の鮭となって泳いでいく。
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