特集 地区担当と業務担当
地区担当・業務担当の検討と保健所組織再編成をめぐって—保健所長の立場から
櫃本 真一
1,2
1愛媛県保健環境部保健指導課
2前愛媛県伊予保健所
pp.419-423
発行日 1992年6月10日
Published Date 1992/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900494
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「公衆衛生」の行方
平成3年末に,厚生省老人保健福祉担当課から「高齢者対策の切り札?」として出された「老人保健福祉計画の骨子(案)」を見ると,まさに「寝たきり・痴呆後追い作戦」であり,福祉だけでなく保健まで巻き込んだ(名前上ではあるが)「計画」の割には,内容は,現状把握のテクニックと,マンパワーや施設面の整備計画にとどまっており,具体的な目標設定や,それぞれを有機的に結び付けるシステム,福祉と保健・医療との連携のあり方を示す表現などは,どこにも見当たらない。この骨子のまま市町村が計画を進行すると(そんなことはまさかないだろうが),高齢者への直接的ケアばかりが注目され,まるで直接対人サービス=公衆衛生?!とさえ捉えられる傾向が,ますます強められていく感がある。
直接対人サービスが市町村へ移行する趨勢の中で,この例に限らず,このような勘違いが横行しており,保健所の「公衆衛生の第一線機関」としての位置づけがますます影を薄めつつある。特に,直接対人サービスから遠ざかっていくことで保健所保健婦の存在が危ぶまれたり,あげくの果てに不要論まで出てくる始末である。個別ケアが公衆衛生と関係ないとは言わないが,地域全体の問題解決につなげて行くことを重視しなければ,単なるサービスにとどまり,公衆衛生を展開する上での手段にもならないと思う。
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