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卒業2年目,勤務にもようやく少々のゆとりをもって臨めるようになったこの頃ですが,無事引きつぎを終えた夜勤明けの解放感と満足が,ひとしお貴重なものに感じられます。助産婦としての仕事のこわさもわかってきたようなのです。さて,夜勤者としての注意をということなのですが,私のつたない体験で得たものを通して,こうありたいと考えていることを書いてみました。皆様のご批判をいただければと存じます。
産科病棟では,同時に母と子の二つの生命を守るという重大な命題があり,時々に応じて,独自の判断を下せることが助産婦の第1の役割だと思います。夜間勤務ではいったいに少ない人数で大勢の患者を受持たなくてはならないため,一人の業務量は非常にふえてきますし,看護補助者もいないため,補助的な業務や雑用に多くの時間をとられることになります。また産科病棟の宿命みたいなものですが,突発的な入院や分娩,授乳時間などによって,短時間のうちに,たくさんのスケジュールをこなさなくてはならない事が多いのです。そこで何が究極の目的で,今第1に何をするか,カッカする頭をしばし鎮めて考えるゆとり,それを持つことが,夜勤中には特に必要だと思います。ちょっとした不注意が,思いもかけぬ大事へ発展してしまう恐しさは,看護者の誰もが胸にたたぎこんでいることですが,もの言えぬ新生児や,分娩進行中の産婦をかかえている私達には,より強くいつも念頭を離れないおもいなのです。しかし,ともすればスケジュールをこなすことが先行して,このおもいめぐらすことを怠りがちになります。忙しい忙しいといって働き回るばかりでなく少しの時間でも全体をみまわしてみることが私にとってこれから必要な態度ではないかと思っています。
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