特集 現場助産婦症例集
ゆがめられた母性—産科保健指導室から
福永 久美子
1
1国際聖母病院産科保健指導室
pp.21-22
発行日 1971年1月1日
Published Date 1971/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204042
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助産婦が「牛乳を1日○本に増やしたほうがよいですね。」と言うと,妊婦は「最近農薬や抗生物質が混合していると騒がれておりますが,奇形の子供が……」と言うし,また,助産婦が「外出はひかえたほうが……」と言えば,妊婦は「運動不足で難産になるといけないのでデパートに…」などと,毎日多くの問題がなげかけられています。母子ともに対して心身両面からの援助をということで,個別指導や母親学級をとおして多くの妊婦の方々に接しておりますが,生活環境,教育程度,経済状態などの違いはあれ,母親になることへの不安と喜びにどのように対処していったらよいかという戸惑いで,心細い感じをうけることが多い毎日です。しかし,彼女たちは妊娠月数が進むにつれて,1人1人個性ある母親に変っていくのがはっきりしてきます。ふくよかな感じで,生まれてくる子供を1日も早くと待ち望み,子供のためならどんな苦労もいとわないような印象をうける母親に接すると,このようなお母さんなら立派に子供を育てていけるなと,安心してみまもってあげることができます。
妊娠10カ月の間には,困難なこともたくさんありますが,賢明にのりこえていけるのはこの種のお母さんなのではないでしょうか。
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