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「産科ショック」をめぐって
島田 信宏
1
1国際聖母病院産科
pp.63
発行日 1970年11月1日
Published Date 1970/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204019
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第41回日本産科婦人科学会の関東連合地方部会総会が,去る7月5日東京の国立教育会館で行なわれました。そして,主催の東邦医大の林基之先生の司会のもとに「産科ショック」とシンポジウムがありました。今日での大きな産科学の問題である産科ショックをどのように考えるべきなのか,ということをめぐって多くの専門家が意見をのべられました。ここには,私がきいて理解した範囲でそのポイントをまとめてみることにしました。
まず,東京大学麻酔科の山村秀夫先生は,「ショックの病態とその治療」という題目で次のようなことをのべられました。産科ショックのうちでも最も多い出血性ショックの病態は,一口でいえば末梢血が循環しなくなった状態,すなわち末梢循環不全なのである。出血して血圧が下降するとカテコール・アミンという物質が正常時の15倍から20倍も血液中に出現して,血管を収縮させて内臓血管内に血液を貯留するばかりでなく,有害なアミン類を出してくる。非常にカテコール・アミンという物質はショックの本態を握るものとして重要である。さらに,輸液をする場合には低分子デキストランが最もよく,ゼラチン類は駄目だということである。コーチゾンのような副腎皮質ホルモンも効果があるが,血液がアンドージス,すなわち酸性になっていたのでは,ショックに対する薬品の効きが悪いので,まず血液の酸性化を重曹などで治療してから種々の薬品を投与するとよいということである。
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