特集 前回帝切妊婦の取り扱い
前回帝切妊婦に対する保健指導
寺田 真廣
1
1東大病院産科妊婦診察室
pp.33-36
発行日 1970年8月1日
Published Date 1970/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203970
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I.はじめに
妊婦保健指導の究極のねらいは,母児ともに健康で妊娠・分娩・産褥を経過しその後の平和な生活を期待すること,につながる。この意味からいって,過去—特に前回帝王切開による分娩を経験している母性にあっては,それ自体が妊娠当初から1つの問題点となりうるわけであり,妊婦保健指導においても,前回帝王切開に関する精神面と身体面とを合わせての生活指導なり援助は,ほかの問題点についての指導に比べてかなり大きな部分を占めることになるであろう。前回帝切妊婦の管理を保健指導の面からも重視しなければならない必要性がここに生ずる。
しかしながら,「前回帝切妊婦に対する保健指導」としての指導の内容・項目・手順といったものを1つのパターンに画一することは不可能であろう。なぜなら帝王切開とは分娩経過における1つの「結果」であり,それに到達する「過程」は多種多様にある。妊婦保健指導は,不幸な「結果」をきたさないためのいわば予防的働きかけとしたならば,前回帝切妊婦の保健指導は多種多様なる「過程」に対応しうる多面的な要素を含んで行なわれることになる。つまり,前回帝切妊婦に対し今回は自然分娩による正常産を1つの目標としたときには,前回帝切における原因・経過を検討しそれらを再びくり返さないような指導を健康管理と併せて計画するべきではないだろうか。また,前回の原因検討と今回妊娠経過などから再度帝切を行なわざるを得ない妊婦に対しては,十分な時間的よゆうを持って精神的準備をはかることが保健指導の要旨になろう。
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