婦人の目
無関心時代
山主 敏子
pp.45
発行日 1969年11月1日
Published Date 1969/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203829
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このごろはテレビや新聞のニュースを見るのがこわいほど,毎日のようにいたましい事件が報道されている.なかでも目につくのは幼い子どもたちの生命が,虫ケラのように奪われる事件である.残忍な犯罪の犠牲となった子ども,自分の親に殺された子ども,走る凶器といわれる自動車にふみにじられた子ども等々.無力な子どもたちはそれらの暴力に対してどう抵抗するべくもない.正に弱肉強食の地獄図絵である.
正寿ちゃん事件のショックもまだ新しいというのに,こんどは山口県下で五歳の女児久恵ちゃんが殺された.犯人はどちらも知能の低い若者である.女の子を持つ親たちは,どんなに幼くても女であるがゆえの災難にあわせてはならぬと,戦々恐々としている.そして東京では子どもたちの心得として,知らない人から話しかけられても返事をせず,白い眼をみせて逃げるようにと教えられている.それでなくてもおとなと若い世代の断絶が問題となっているのに,おとな不信の気持を幼い心に植えつける注意は,好ましくないことはたしかである.先生も親も,そんな注意はしたくないだろう.だが子どもを悪魔から守るためにはいたし方ないのだ.
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