特別寄稿 厚生省の乳児死亡調査
乳児死亡の実態—社会経済的側面からの接近
佐藤 良也
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1厚生省統計調査部人口動態統計課
pp.30-36
発行日 1967年8月1日
Published Date 1967/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203439
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1.はじめに
乳児の生存は,妊娠中の母体の健康状態と,出生後の養育条件に強く作用される.以前から乳児死亡を社会経済的な要因と,密接な関連のもとに観察されたのも,このような理由によるものであり,乳児死亡率は,ある地域の衛生状態ひいては生活水準までもよく反映するバロメーターとしての役割を与えられていた.諸外国では,割合古くから,これに関連した調査例がみられ,その2,3を紹介すると,1920年のアメリカでは,年収450ドルと1,250ドル以上の世帯では,乳児死亡率は,それぞれ出生千対170と50だったと報告した.現在でも,ニューヨークの黒人街では,高率な乳児死亡率をみせているが,ある医師にその理由をきいたとき,一語「貧困(poverty)です」と答えたのが,著者には印象的だった.また,1939年のイギリスの例では,専門的技術的職業と単純労働者の世帯では,乳児死亡率に約1/2の開きがあった.また,ある学者は,貧困による母親の栄養不足が,乳児死亡を誘発するとの研究をまとめた.
ともあれ,このように世帯の生活水準・職業・栄養などのほか,住居環境・医療などの要因が,乳児死亡を作用する大切なものといわれている.
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