分娩体験記
大声でうなった保健婦
林 義緒
1
1大阪府泉佐野保健所
pp.42-43
発行日 1966年2月1日
Published Date 1966/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203131
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生皮をはがされるような腰痛
2年近くも前のことなのに「お産」のことは思い出しても恥かしい.保健所の母親学級で,自信はなかったけれども一応講師をしていて,分娩補助動作の説明などもしていた.本気で無痛分娩を信じていたし,お産が苦しいとは思っていなかった.それが生まれる6時間ほど前に,心細くて涙が流れて,おんおん泣き,陣痛がはげしくなってからは大声でうめいた.
深夜,あたりに迷惑と思いつつ黙っていられない腰の痛さ.私よりおくれて入院してきた同室の初産者が静かに男児を生んだ.私は「あやかりたい,あやかりたい」と言いつつうめいている.もう母子ともにだめになるのではないかという恐怖もあった.心音を聞こうとすると胎児が大きく動いて耐えられないほど痛む.「おナカにさわらないで」と助産婦さんに叫ぶしまつ.
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