特集 公衆衛生当面の課題(第13回社会医学研究会特集)
保健婦活動のあり方
木下 安子
1
,
林 義緒
2
1東京大学保健学科
2八尾保健所
pp.752-768
発行日 1972年12月15日
Published Date 1972/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204588
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1.過疎地保健婦活動からの訴え(報告者:宮本秀美・京都府丹後町)
今まで保健婦2人がいたが,2人ともやめ約1年のブランクのあと就職して,1人で働いている.人口9,600人,年間出生150人足らずで京都の北端にあり,医療にも産業にも恵まれていない.丹後チリメンと観光にたよっている.その町での1年半ほどの経験を話したい.出稼ぎは昔より少なくなったが毎年200人ほど酒づくりや土木関係で出て行く.はた織りして,夏は民宿にきりかえていくところも多くなった.昔の農漁業のときは,女手が休めたが今は休めない.その上はた織りは音がする.音にせかされて,町中落ち着かないムードがある,女性の健康も阻害され,経済的にも産前産後の保障もない.
保健所と管内の各町が協力して疲労度検診(血圧,尿,血液,診察)というものをしていたが,府から過剰サービスと指摘され,検診は中止された.その上行政の平等ということで,町単独の事業を計画した場合には技師派遣を遠慮させて欲しいという方針になった.過疎地の町村保健婦にとって,専門技術職員のいる保健所はよりどころである.町で医師や検査技師を雇いたくても,人材がない.ぜひとも保健所の協力が必要なのである.結局保健婦1人の力にしか頼れず,まにあわせの保健サービスしかできない.
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