わたしたちの研究
乳幼児の食事—特に偏食の問題
松本 小夜子
1
,
平田 佳子
1
1武蔵野赤十字助産婦学校
pp.53-56
発行日 1965年12月1日
Published Date 1965/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203099
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1.食事の問題
食事の問題は生まれた直後から起こるものである.米国の学者によれば,すべての子どもは7歳ごろまでは多かれ少なかれ食事の問題をひきおこすといわれる.食事の行動は子どもの全般的な適応性をもっともよく示すものであり,子どもに食事を与える保育者との心理的な関係を反映することが多い.子どもの年齢が小さいほど,心理的な原因は食欲,消化その他の障害をおこしやすい.子どもの消化器系の機能的統合は,未だ十分であり,興奮,怒り,恐れなどの情緒的な影響によって動かされやすい.このことは乳児を突然母親から離した時の反応を観察してみると理解できる.生まれて間もない乳児でさえも,乳を与える保育者の愛情,不安,不機嫌などを,漠然とした印象であっても,捉えることができる食事に関するさまざまの問題は,文化の進むにつれて多くなってくるといわれる.それは食生活が規則的機械的なものになりやすく,育児法についても細かい予定表が作られ,母親が強迫的,強制的な方法をとりやすいためといわれるが,わが国では,食事に関する過度の関心と無関心,放任という極端な差がおのおの社会階層によってみられる.食事に関する問題の原因としては,大別すると身体的原因はよるものと心理的原因によるものとがある.これらは互いに密接な関係があって,からみ合っているのが常である.
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