--------------------
舞台になったある"助産婦の手記"—優生保護法の改正を叫ぶ「水」
丈
pp.45
発行日 1964年6月1日
Published Date 1964/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202779
- 有料閲覧
- 文献概要
野放しの妊娠中絶のおそろしさを訴えた助産婦,西岡璦子さんの著書「これをあなたは見ていないのだ」(大平書房・190円)が俳優座の舞台で取り上げられ,5月8日から24日まで上演された.
内容は西岡さんの原作に基づいて劇作家,田中千禾夫が脚色し,昨年の「婦人の友」12月号に発表したもの.心ならずも生活のために妊娠中絶の介助を要求される,カトリシストの助産婦しん子(高山真樹)の苦悩を,ファンタジックな手法で,詩情豊かに描いている.劇中,水のほとりに咲いた花の中の胎児(非常に象徴的な好場面)が,法と科学の名のもとに(この場面で黒ずくめの男たちが出現する)無残におし拡げられ,棄てられてゆく.そして胎児たちは親を求めてさ迷い歩くのだった.幸福なお産の陰で,残酷なこの処置に抗すべきもないしん子は,苦悩に身をさいなまれ,ひたすらに神に祈る.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.