あんてな
優生保護法の改正と胎児医学の進歩
近 寅彦
1
1厚生省母子衛生課
pp.69
発行日 1972年3月1日
Published Date 1972/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204338
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優生保護法の一部改正案が厚生省から5月に国会に提出されたが,健保法案などの紛糾のあおりを受け,結局,実質的な国会審議もなく次期国会での「継続審議」となった。
優生保護法は,優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに,母性の生命健康を保護するという目的で,優生手術,人工妊娠中絶,優生保護相談所等に関し,昭和23年に戦時立法の「国民優生法」にかわって,谷口弥三郎参議院議員らによって,議員立法で提案され,制定されたものである。現行法はその後,数回にわたって改正され,とくに人工妊娠中絶については,本人または配偶者が,精神病または精神薄弱である場合,妊娠の継続が身体的または経済的理由により母体の健康をいちじるしく害するおそれのある場合にも行なわれることとなり,またこれまでの地区優生保護審査会を廃止しすべての場合について指定医師が,本人および配偶者の同意を得て人工妊娠中絶を行ないうることとなった。人工妊娠中絶件数は,本法制定後,年々増加の傾向にあったが,昭和30年の約117万件をピークに減少し,昭和46年には約73.9万件となっている。この大部分が母体の健康を害するおそれという理由である。
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