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年とってからのお産
渋沢 喜守雄
pp.38-40
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202679
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私の子どものころ,近所に親切なオバさんがいましたが,5回めのお産でなくなり,何ともいえない寂しさを感じたことを思い出します.その人は46歳で,今の流儀で数えても44歳何か月かになります.高年産婦が危険であることは,産婦人科の専門家には常識となっているのでしょう.ここでは,母体の方の危険についてお話しするつもりはなく,生まれてくる子どもの方に,たいへんな変化が起こりやすいことを話題にしたいと思います.
ご承知のようにモンゴリズム,蒙古病という名前の病気があります.これは生まれつきの病気で,母胎内でその病的特徴をもっています.母胎内で6週の胎児ごろまでは,ふつうのように発育しますが,それ以後,発育がひどくおくれてしまうので,死・流産が多く,また無事に生まれても,あとで申しますような奇形があるために長生きができず,30歳以上に達するのはまれであるといわれています.そのモンゴリズムは,ひとくちにいって第1図のような奇形をもっている病気です.いちいち説明しきれませんが,皮膚から内臓まで,さまざまの発育障害をみるものです.生まれてまもなくは,手や指や趾の異常,大泉門が2歳ごろまで閉じないこと,手掌の溝や指紋が一種独特であること,知能発育がおくれていること,目ことに内眼眥に皮膚皺ができていることなどで,案外容易にみつかります.
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